2023年の後半。
年間1000万を越えた喜びは確かにあったはずなのに、

その“温度”は日を追うごとに薄くなっていきました。
静かな虚無だけが、ゆっくりと胸の奥で広がっていく。
気づけば僕は、毎朝ホールに向かいながら
どこか遠くから自分を眺めているような感覚を抱いていました。

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■ 成績は伸び続けているのに、心だけが沈んでいく
数字は順調でした。
軍団の動きもいつも通り整っている。
立ち回りも、判断も、配置も、すべてが問題ない。
むしろ、この頃の僕たちは“完成形”だったと思います。
だけど──
なぜか心だけはついてこなかった。
台の前に座っても、
高設定をツモっても、
収支が上がっていっても、
心がまったく動かない。
勝つことが日常になりすぎたのか、
僕の感情の回路は、少しずつ鈍くなっていました。
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■ 朝のホールで感じた、小さな“影”
この頃の朝には、確かに異変がありました。
開店を待つ列に並んでいるとき、
以前よりも空気が重く感じる。
朝イチはいつも通り、最善だと思う台に僕も座る。
けれど、それを“打ち切る”ことはほとんどなかった。
すぐに島全体を確認し、メンバーの配置や状況を把握するために席を立つ。
この立ち上がる瞬間に、ふとした“重さ”があった。
「……今日も淡々と進めるだけか」
そんな言葉が心の奥で浮かんでは消えていった。
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■ 完成形の軍団と、壊れ始めた僕
軍団としての仕組みは、この時期が最も洗練されていました。
すべてが自動で動くように整っていたけれど、
その完璧さが逆に、僕の胸に重くのしかかっていました。

「この判断をできるのは、結局自分しかいない」
そういう“自負”と“責任”がいつも背中に張り付いている。
僕の代わりに親ができる人間は、当時のメンバーにはいなかった。
だからこそ、逃げられない重さだけが増えていった。
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気づかないうちにその重圧が、
僕の心のバランスを静かに崩し始めていた。
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■ 成功の影で、心がゆっくり濁っていく
毎日勝っているのに、
心はどんどん鈍くなる。
台の音はただの騒音に変わり、
期待値や出玉はただの数字になる。
「楽しい」も「悔しい」もなく、
ただ結果を処理していく毎日。
そんな日々が続くほどに、
僕の心はゆっくり濁っていった。

そして9月。
気持ちが折れる音が、確かに聞こえた気がした。

⸻次回、第十九話へ
静かに摩耗していく2023年後半。
そしてついに、9月。
僕は初めて“休止”という選択を取ることになります。
そこで起きた出来事が、
軍団長としての僕の心をさらに曇らせていくことになる──。
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