【第三章:軍団長と全盛期】(第十四話)合同イベント時代の裏側と、軍団としての成長と違和感

物語

2022年に入ると、ホール側が晒し屋を使ったイベント告知を本格的に始め、業界全体の流れがガラッと変わりました。


特に、グループ店が同じ日に同じ公約を行う「合同イベント」は、軍団にとっても専業にとっても最重要級のイベントになっていきます。

抽選の価値が跳ね上がり、
情報の価値も跳ね上がり、
そして“立ち回りの精度”が軍団全体の勝敗を決める。

そんな時代でした。

■ 合同イベントは“軍団が最も強い日”

当時の合同イベントは、まだ一般層への認知が低く、強い軍団ほど恩恵を受ける状態でした。

なぜ合同イベントが軍団に向いているのか。


理由はシンプルです。

複数店舗で同じ対象が入る=軍団同士で情報を共有すると精度が爆上がりする

1店舗で拾えないヒントも、
別店舗からの確定・強挙動で一瞬で補完できる。

開店後わずか数分で対象機種が割れることも珍しくありませんでした。

結果、
「軍団は早く固まる。ピン専業は手遅れになる」
という構造がどんどん加速していったのを覚えています。

■ しかし、有利だからこそ“差”も浮き彫りになった

軍団規模は大きくなり、
稼働範囲も広くなり、
やれることは確実に増えていった。

でもその反面、ある違和感が少しずつ大きくなっていきました。

それは、

「自分が見えている世界と、周りの軍団が見えている世界の差が大きすぎる」

ということでした。

強い軍団の親は、とにかく判断が早い。
挙動の取り方も根拠の拾い方も洗練されていて、
対象が割れる前から“方向性の答え”を理解しているような動きをしてくる。

自分の軍団も成長したとはいえ、
彼らと比べるとまだまだ差がある――
そんな焦りにも似た感情があったのを覚えています。

■ 軍団長としての成長と、避けられない疲労

運営面のレベルは確実に上がっていました。

・引き子・打ち子の管理
・朝の動線の最適化
・店ごとの“癖”の把握
・店舗分散と情報回収
・狙い精度の向上
・全体の動きを俯瞰する力

これらは毎日の稼働を通して自然と磨かれていきました。

しかしその一方で、
“軍団長としての疲労”も積み重なっていきます。

朝から晩まで動き続けて、
気を張り続けて、
何か1つでも判断を誤れば全員の期待値が崩れる。

知らないうちに、
「勝つことは出来るけど、楽しくはない」
そんな状態に近づいていたのかもしれません。

■ 軍団の成功。だけど心の中では…

2021年の後半を経て、
2022年はさらに勝ちやすい環境になりました。

・晒し屋イベント
・合同イベント
・高設定の入れ方が読みやすい店舗
・軍団との共有情報
・扱いやすいジャグラーの傾向

これらが噛み合い、
勝つだけなら難しくない状況が続いていました。

しかし、この頃から僕の中には
うっすらと “別の感情” が芽生え始めます。

「この先もずっと軍団長を続けたいのか?」
「勝てても心が燃えないのはなぜなのか?」

稼ぎは順調、メンバーにも恵まれていたのに、
なぜか満たされない。

環境が整えば整うほど、
逆に“違和感”が大きくなっていったのです。

■ 第三章の終盤へ──

軍団としては全盛期。
期待値も収支も伸び続けている。

けれど、
僕自身の心には確実に変化が起きていました。

その変化は、
2022年後半に起きた “ある出来事” をきっかけに
決定的なものになります。

次回の第十五話では、
軍団稼働が「仕事」へと変わっていく過程と、
そこから生まれた“モチベーションの揺らぎ”について書こうと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました